久保 善紀 氏 |
── 機械設計技術者試験制度をお知りになったきっかけ、また受験された動機について教えてください。
久保:試験制度は会社で推奨しており、また母校である奈良高専でも受験を勧めている関係で知りました。受験動機は、給与に資格手当てとして反映されることと、客観的に自分の技術スキルを確認できるのではないかと考えたからです。
── 工業会が主催した受験講習会を受講されましたか?
久保:1級受験のため、というこでは受講はしていませんが3級〜2級合格までの間に、何度か奈良高専主催の公開講座「機械設計技術者初級講座」を数回受講しました。このときに配布された資料やテキストは1級対策の勉強においても非常に役に立ちました。
── 試験の難易度はいかがでしたか?
久保:科目によって大きな差があるようです。科目によって次のような印象を受けました。
設計管理: 私としては比較的易しい問題でしたが職種によっては難しいかもしれません。技術と管理を両方こなしていれば一般常識の範疇です。ISO9001等の勉強をしておくと良いと思います。
機械総合基礎: 設計製図の実務能力が問われます。機械構造を組立図から理解でき、そこから部品を抜き出して製作図を作成できる能力が必要です。自分で図面を描けるか、部下の図面をチェックする実務スキルがあれば簡単ですが、フリーハンドの手書きでは焦ると時間切れになりますので落ち着いて取り組むように心がけたいところです。
環境経営: 常識問題ですが実際かなり難しいと思います。具体的な数字や制度、条約名はよほど環境分野の知識がある人でなければ全問正解は難しいでしょう。しかし記号選択問題でもあり、文脈と言葉のつながりから類推することで六割以上取れるのではないでしょうか。
選択問題: 三種類のうち自分の職種から産業機械を選択しましたが、この科目がいちばん難関だと思います。ポイントは、難しい公式を使ったり覚えたりする必要はなく、高校の物理程度の知識で良いので、設問の機械がどのような構造でどんな式をあてはめればよいかを思いつけるかどうかにあります。必ず簡単な式で表せると信じ、落ち着いて考えることが重要です。また作戦のひとつとして、職種にこだわらずに「化学・環境機械」や「荷役運搬機械」に絞って勉強するのも手だと思います。こちらは、公式自体を覚えておけばどのように当てはめるかを悩まなくて良いタイプの問題です。
小論文: 自分としては得意分野でもありいちばん力を発揮できたと思います。「苦手だ」とおっしゃる受験生も多いでしょう。報告書を書きなれているかという点と、金銭や組織管理に携っていれば自ずとスキルはあがってくるはずです。小論文を苦手に思っている方は、日頃の業務のなかで練習する場を見つけてみることをお勧めします。
── 試験勉強にあたって実行した勉強方法は?
久保:前の項目でも触れて触れていますが、仕事に絡めて仕事のなかで勉強するというのが必勝法だと思います。正直、過去問をやっても、すべてが同じ傾向の問題ということはないでしょう。まず計算問題は、高校の物理、工業高校の専門分野程度でよいので摩擦、直線と円の運動方程式、力のベクトルと釣り合い、滑車、てこ、歯車あたりを中心に基本の式を復習。管理・環境問題は、ISO9001、ISO14001の文献があれば参考書になると思います。会社で取得済み、もしくは取り組み中なら、会社の文書がテキストになります。設計・製図問題はひたすら実務で図面を描き慣れ、また読み慣れるようにしておくだけです。自分で描くだけでなく、部下、後輩の図面をチェックして訂正するのが最も有効な勉強方法になります。さらに私は社内で2級、3級を受ける部下、後輩向けに勉強会を開催したのですが、これはむしろ自分の復習に役立ってくれました。交互に講師役を務め得意分野を教えあう、自分が仕事で担当した機械に用いた計算について説明しあう、そういった勉強方法が非常に有効だと思います。
試験勉強だけでなく、仕事で使っている主な参考書を挙げてみます。
・「JISにもとづく機械設計製図便覧」 理工学社
・「基礎機械設計工学」 理工学社
・「機械公式活用ポケットブック」 オーム社
── これから1級受験を考えている技術者の方に対して何かアドバイスがあれば教えてください。
久保:ここまでに様々な勉強方法を挙げていますので参考にしていただきたいのですが、基本は仕事と勉強を積極的に結びつけること。特に1級は「特注機械の設計を、組織の中で、技術・金銭・人間を管理・掌握する技術監督者」の能力を判定するような問題傾向になっているようです。つまり、自分自身が今そのような技術者であれば特別な勉強は不要であり、「そんな仕事ではないよ」というのであれば、そこを目指して仕事をしてゆくことが勉強になるはずです。
── 1級機械設計技術者として、これからの抱負があれば教えてください。
久保:実は資格取得直後に諸事情により会社が倒産し、現在は求職中の身です。再就職あるいは個人で独立の道を選ぶか模索中でもあります。いずれにせよ機械設計技術者1級の資格取得は自分にとって自信となり武器であると思っています。資格をただの資格として眠らせるのではなく、資格にふさわしい実力と成果を発揮できるよう努力してゆきたいと思います。私の恩師から贈られた言葉「自立した技術者は、会社が潰れても滅びることはない」を胸に進んでゆこうと思います。
── どうもありがとうございました。
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