令和5年度 機械設計技術者試験講評
令和5年度機械設計技術者試験に関しての講評
今年度当初5月には、コロナウィルス感染症が5類に移行したことから今年の試験は正常な形で実施されると期待していました。期待通り試験準備や会場での実施状況は、関係各位のご尽力もあって大変スムーズに遂行できました。皆様に感謝申し上げます。ただし、本年の受験者数が昨年に比べ1割近く減少したことは大変残念でした。特に2級と3級の受験者数減少が顕著で、数年続いたコロナ禍による精神的、肉体的な影響が受験生に影響を未だ与え続けているのか、あるいは他の原因が潜んでいるのか、少し時間をかけて受験生減少の要因を精査する必要があると思っています。
さて、今年の問題の難易度はいかがであったでしょうか。3級、2級の基本科目に関しては、例年になくよくできていたようです。3級では多くの科目で50%以上の正解となっていました。確かに全科目通じて基本的専門知識を問う設問が多かったことも得点を押し上げる原因となったと見ています。したがって、合格率は最近では断トツによい結果となりました。
2級も例年並みの正解率を確保していますが、基礎科目では力学分野が少し残念な得点でした。こちらは新しい範疇での設問が多かったことが影響したものと考えます。今後も従前にないシチュエーションやアプローチを採用した問題が出題されてくると推定されますが、最終的な解答は、今まで学んできた基本的力学の内容につながっています。つまり、2級ならではの3級とは異なる応用的問題への対応がますます必要になります。他の科目でもこの種の出題が予測されますので、留意しておきたいところです。2級試験問題Ⅲの応用・総合問題も例年と変わらず得点が伸びていないのも残念です。
1級に関しては、ベテランの設計者が安定的に受験されるということで、ここ数年受験者数、得点分布、合格率と2級、3級に比べて変動は見られません。実技科目の得点が低いというのも相変わらずという結果が今年も出てしまっています。ベテランとはいえ、受験生は設計中堅のより若手に近い方が多いようですので、マネジメント業務が増えてくる中でももう少し頑張っていただきたいところです。
現在、設計者の関与する技術分野は拡大しています。特に情報関連技術(DX)の進展は目覚ましく、機械系技術者といえども無視するわけにはいきません。機械設計者に対しても、設計対象に従来の機械技術以外の専門性が求められる機会が多くなっていると思います。一方、本工業会が主催する機械設計技術者試験は、言うまでもなくメカニカルな技術を追求する課題が多くなっています。製品が稼働して最終的に目的を達成する機械的解決方法を問う問題です。情報技術もこれらの製品の高付加価値化を付与することが目的であることから、機械技術を十分に理解したうえでの活用が不可欠です。機械をないがしろにしては、世の中に役立つ製品は生み出すことはできません。
先に述べた今年の受験生減少も情報化の流れが影響を与えている気もしますが、機械設計技術者試験受験をよい機会にして機械技術を再度見つめ直してみてはいかがでしょうか。新たな機械設計技術者試験への挑戦を期待しています。
機械設計技術者出題委員会
委員長 朝比奈 奎一