令和6年度 機械設計技術者試験講評

令和6年度機械設計技術者試験に関しての講評     

 令和6年度の機械設計技術者試験の発表がありましたが、受験された皆様方はいかがだったでしょうか。合格率を見ると、2級、3級においては年々向上してきているようで若手受験者の健闘が見られます。特に3級では50%を超えて、2人に1人は合格できるレベルになっています。

 3級での問題は機械工学の基礎科目で構成されていますが、大学や高専、工業高校の授業でも、時代の要請にこたえて情報系(AI含む)や環境科学系(SDGs)等々の科目が増えることで、力学を中心とした基礎科目が弱体化していると聞いています。そのためか解答に苦戦している姿が目に浮かびますが、きっと受験生は過去問の学び直しなどで機械の固有技術に再挑戦して結果を出しているように思われます。将来の物づくり日本にとって、大変心強い気がします。機械設計技術者試験は若い機械エンジニアに良い刺激を与えることにも貢献しているのです。

 2級の問題も基礎科目が融合化された形態で出題されています。受験生には製造に関わる若い方も多いと思われます。企業においては最近では収益重視のため、安価な海外部品調達が加速していると聞いています。これによりじっくり基礎技術を駆使して問題解決を図る機会が減少し、若手技術者を指導できる中堅技術者も減ってきているのではないでしょうか。2級受験生はこのような悪環境をはねのけ孤軍奮闘し、合格に結び付けているのだと思います。2級の問題の中では、毎年「応用総合」の得点が伸びていないのが気がかりです。基礎科目にある知識を組み合わせた応用問題を解く内容になっているので、実務での設計業務に近い課題だと思います。学生を中心とした3級との違いはここにあります。企業内での先輩技術者との指導や議論の中で培われる能力でもあり、企業環境の変化が影響しているかもしれませんが、様々なケーススタディを経験することで身に着けていって欲しいものです。

 1級は3級、2級に比較して合格率は少しダウンしました。1級の合格者はベテラン設計技術者として認定を受けるわけですから、機械の固有技術のほかに、企業を取巻く環境変化にも敏感に対応できる能力も不可欠となります。これらを問う問題はそう多くはないと思っています。とはいうものの実技科目は例年通りあまり向上が見られません。この科目は2級の応用総合よりさらに実務に近い問題が出題されます。受験生の中には、もはや実際に技術計算に携わっていない方もいると推察しますが、先に述べたように3級や2級を受験する若手設計者を社内で指導することもベテラン設計者の任務であると思います。もう少しばかり若いころを思い起こして自己研鑽に励んでいただきたいと願っています。

 近年、受験数が少し減少しています。今まで述べてきたような学校における学科、科目の変更、企業を取巻く環境変化などが起因していると思われますが、機械設計者が求められる基盤技術は変わることはなく、これを無視しては先端技術や先端製品の開発は不可能です。合否はともかく、その過程で培われる知識や解決力は将来きっと役立つと思います。関係者をお誘いの上、今後とも機械設計技術者試験への挑戦をお勧めします。

機械設計技術者出題委員会
委員長 朝比奈 奎一