平成27年度 1級合格者インタビュー
2016.3.3 掲載
株式会社AKICO 設計技術部 第二課 課長 原田 伸也 氏
── 機械設計技術者試験制度をお知りになったきっかけ、また受験された動機について教えてください。
原田 :会社では圧力容器を中核とする化学装置の設計と試運転、客先対応などをしております。試験は平成22年度の3級受験時、ネット検索で知りました。翌年度には 2級に合格したので、さらに上を目指して1級に挑戦したいと考えておりました。その頃から、難しい案件に携わるようになり、流動や熱交換の計算業務が増え たため、解決の新たな糸口を模索していました。自身のレベルアップと問題解決に、化学系国家資格などに挑戦してきましたが、全体を俯瞰する機械設計能力の 向上には、その出題内容から機械設計技術者試験が最適と感じていました。そのころ、高専時代の同級生と再会しました。彼は大学で学びなおすために会社を退 職、一般受験で国立大へ入学しました。卒業して再就職した彼から影響を受け、モチベーションはさらに高まりました。平成27年度、4年の実務経験で受験資 格を得たので1級の受験を決意しました。
── 受験のための講習会(JMC主催、学校主催など)を受講されましたか?
原田 :受講していません。
── 試験の難易度はいかがでしたか?
原田 :設計管理科目が難しいと感じました。「開発設計部門の業務革新」について、マーケティング、設計、生産、営業の各部署が、源流段階から開発に加わることの重要性を考察するものでした。製造業の始点から終点までの、いわゆる「源流管理」に関する設問です。
── 試験勉強にあたって実行した勉強方法は?
原田 :機械公式の復習と、日常業務で行っている分野の再確認、そして業務外の分野を学習しました。一般問題には機械の公式集を、選択問題には高圧ガスの資格本などを、論述問題には理系文書作成のための指南書で対策しました。以下に、私が使用した書籍をご紹介いたします。
- 機械系公式集 (工学社) 中嶋 登 ・ 石原 英之
- 実務に役立つ機械公式活用ブック (オーム社) 安達 勝之 他
- 高圧ガス保安技術 第10次改訂版 (高圧ガス保安協会)
- よくわかる計算問題の解き方 「高圧ガス甲種資格者への近道」(高圧ガス保安協会)
- エネルギー管理士熱分野 模範解答集 (電気書院) 橋本 幸博 他
- 理科系の作文技術 (中央公論新社) 木下 是雄
── これから1級受験を考えている技術者の方に対して何かアドバイスがあれば教えてください。
原田 :1級の一般科目では、品質やコスト管理、寿命予測や改善提案、図面訂正などが出題されます。選択科目では、業務上最もマッチしていた、化学・環境機械 を選びましたが、日常でなじみの少ない、燃焼や騒音の出題がありました。IoTによる製造業のシステム化や、水素社会到来のビジョンを論じる問いがあり、文章力も問われます。出題分野が非常に多岐に渡るため、的確な参考書を選ぶこと、また、客先にて自社商品の説明を行ったこともよい刺激になりました。商品説明などの講演では、聴衆の立場を考えた資料作成、それを自ら行うことで予想もしない反響があり、よい刺激となります。試験は時事問題も多いので、インターネットやテレビの技術ニュースに、日頃から関心を寄せることが重要です。最近では水素社会やエネルギー革命、COP21などが話題となりました。3次元技術をはじめとする次世代のCAD/CAM分野は、今後も話題が絶えないでしょう。
小論文は3つのテーマから選択し、1500字程度で考えを述べます。自分は「部門課題の顕在化と対策について」を選びました。グローバル市場の中であなたの部門が抱えている課題を上げ、改善策、改革案を述べよというものです。論述は事実と意見をハッキリさせることが重要です。はじめに事実を箇条書きで列挙する、そして意見を添えて対策案を提案する。起・承・転・結を軸に、実体験にもとづいた表現にすると、濃密なものとなるでしょう。
── 1級機械設計技術者として、これからの抱負があれば教えてください。
原田 :急速なグローバル化で顧客の要望は厳しくなっています。(性能・安全・コスト・環境など)客先折衝(仕様や見積・納期の検討)の計画と成功には、専門知識と経験が鍵を握ります。よく機械の良し悪しは、コストを含めた8割が基本設計で決まるといわれます。また、機械工学は経験工学ともいわれます。失敗から学んだ経験をノウハウにする、これに貪欲に取り組むべきです。顧客の高い要望を満たすには、俗に言う「一人屋台方式」で責任をもち、全体を俯瞰する職人のような深い仕事が必要と痛感しています。一方で、団塊世代の大量退職により、職場教育のみの専門家育成(ON-JT)は、次第に難しくなっているのではないでしょうか?
仕事をしながらの資格試験挑戦(OFF-JT)は、知識を増やしながら経験を積めるため、スキルアップに最適です。しかし「合格したら終わり」では意味がないですし、ただ漠然と「勉強しよう」では長続きもしません。「合格への目標を勉強の手段に」すると、継続して取り組めるのではないでしょうか? 得たモノを生かすことも肝要で「技術者は一生勉強!」と思います。自己啓発のきっかけを与えて頂いた本試験に、この場を借りて感謝を申し上げます。今後は、1級機械設計技術者として誇りをもち「機械設計のプロフェッショナル」として、システマティックなものづくりに精進します。
── ありがとうございました。